賃金は多くの労働者について生活を支える唯一の収入であるため、賃金支払いについては労基法において厳格な制限、基準があります。そのうちの1つに「賃金の全額払い」というもがありますが、これは「賃金は全額を支払わなければならない。」というものです。
つまり、従業員に賃金を支払う際には、何も天引きせずに支払いなさい、ということです。前提として天引きを否定していながら、例外的に天引きを認めるという立場を取っています。例外は以下のようなものです。
1.法令に別段の定めがある場合(法定福利費等)
所得税、住民税、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料です。
2.労働組合ない場合は労働者代表との書面による労使協定がある場合
この協定を「賃金控除協定」と言います。例えば、弁当代など購買代金、社宅・寮など福利厚生施設の利用料、組合費や親睦会費、互助会費、従業員への貸付金の返済金などを賃金控除する場合は労使協定の締結が必要です。
協定書に記載する事項
協定書には①何を控除するか(控除の種類)、②賃金支払日、③協定書の有効期限、④協定の当事者などを記載します。なお、この労使協定は労働基準監督署への提出は不要ですが、会社として保管しておかなければなりません。法定福利費以外のものを天引きしていながらこの労使協定を保管していなかった場合、労働基準監督署の調査があったときに是正勧告を受けることになります。
ちなみに、遅刻した分を差し引くことは全額払いの原則に違反しません。これは「ノーワークノーペイ」の考え方により当然に差し引かれるものとされます。
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