労働基準法上労働時間に関する規制の対象外となる「管理監督者」ですが、実態として中小企業において管理監督者に該当する管理職はほとんどいないと思った方が良いでしょう。
具体的な裁判例を紹介します。
1、大阪地裁判決 昭和61年7月30日
ファミリーレストランの店長が管理監督者にあたるかを争った事件です。
・店長としてコック、ウェイター等の従業員を統括し、採用にも一部関与し、店長手当の支給を受けていたが、従業員の労働条件は経営者が決定していた。
・店舗の営業時間に拘束され、出退勤の自由はなかった。
・店長の職務の他にコック、ウェイター、レジ、掃除等全般に及んでいた
上記のような状況から管理監督者性が否定されました。
2、大阪地裁判決 平成8年9月6日
ベーカリー部門及び喫茶部門の店長が管理監督者にあたるかを争った事件です。
・売上金の管理、アルバイトの採用の権限がなかった。
・勤務時間の定めがあり、毎日タイムカードに打刻していた。
・通常の従業員としての賃金以外の手当は全く支払われていなかった。
上記のような状況から管理監督者性が否定されました。
3、札幌地裁判決 平成14年4月18日
学習塾の営業課長が管理監督者にあたるかを争った事件です。
・人事管理を含めた運営に関する管理業務全般の事務を担当していたが、裁量的な権限が認められていなかった。
・出退勤について、タイムカードへの記録が求められ、他の従業員と同様に勤怠管理が行われていた。
・給与等の待遇も一般従業員と比較してそれほど高いとはいえなかった。
上記のような状況から管理監督者性が否定されました。
このように、多くは「タイムカードなどで勤怠管理をされる側であった」「管理者というほどの裁量が与えられていなかった」「管理者に相応しい手当などが支払われていなかった」などを根拠に管理監督者性が否定されています。
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