同一労働同一賃金を実現するために厚生労働省が示しているガイドラインについて説明します。
定年後に継続雇用された有期雇用労働者の取扱い
定年後に継続雇用された有期雇用労働者についても、パートタイム・有期雇用労働法が適用される。有期雇用労働者が定年後に継続雇用された者であることは、待遇差が不合理であるか否かの判断に当たり、その他の事情として考慮されうる。様々な事情が総合的に考慮されて、待遇差が不合理であるか否かが判断される。したがって、定年後に継続雇用された者であることのみをもって直ちに待遇差が不合理ではないと認められるものではない、とされています。
これはつまり、「定年再雇用したのだから労働条件が下がって当然だ」という考え方は間違っているといっています。あくまで待遇差が総合的に考えた上で妥当かどうかを検討しなければならないということを言っています。
有名な長澤運輸事件では、定年後再雇用されたドライバーの賃金を2割引き下げたことが同一労働同一賃金の原則に反するとした訴訟ですが、結果として精勤手当、超過勤務手当の格差は「不合理」とされたものの、同社が老齢厚生年金の支給に合わせて調整手当などで手取りが下がらないように工夫していたことなどから、能率給及び職務給、役付手当、住宅手当、家族手当、賞与の格差については合理的であると判断されました。
最高裁では「定年再雇用の場合は世間一般で考えると給料が下がるものだ」という「常識論」を採用しませんでした。長澤運輸事件では定年前後で働く内容が全く変わっていなかったという特殊な事情があり、実際の現場では定年を境に仕事内容も軽減する方がむしろ一般的かもしれません。個別の事情に合わせて「賃金が下がる合理的な説明ができるか」を検討していく必要があると心がけましょう。
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